03〈企業〉
銀行・信託業
鶴岡信用金庫
【お話を伺った人】
伊藤 敦子さん/阿部 至さん
人事企画課
「地域の中でも最も身近で、便利で、頼りになる」を経営理念に掲げる鶴岡信用金庫(つるしん)は、山形県最大手の地元密着型金融機関として鶴岡市に本店を構えています。本部すぐ横の本店でお迎えしてくれるのは、鶴岡市出身の絵本作家である土田義晴さんによるイメージキャラクターのくう(クマ)・きっき(キツネ)・みみ(ウサギ)。本部1階受付の3体はマスク姿でしたが、思わずほっと心が緩みます。
お話をお聞きしたのは伊藤さんと阿部さん。お二人は人事企画課として、働きやすい環境づくりに努めています。2015年から推進している取り組みが、月末週をのぞく毎週水曜日を「NO!残業デー」と定めたことでした。時間外労働への意識改革をしよう。その狙いの効果は顕著で、ふだんから終業の時間を意識して仕事に取り組む意識が高まり、2019年度の時間外労働は月平均7.1時間と、以前より3時間以上短くなったといいます。
さらに2020年12月からは、終業時間30分前に、職員全員のパソコンのデスクトップ画面に終業時間を伝えるメッセージを送信することに。メッセージを見たタイミングで、残業の申告漏れがないかも確認してもらっているそう。発案した阿部さんも「リーダー自らが早く帰宅するように努めることで、帰りにくい雰囲気をなくしたい」と積極的に帰るようにしているそうです。このノー残業デーの導入は、企業として取り組みやすい好例だともおっしゃいます。
ワーク・ライフ・バランスを意識して取り組みをはじめたのは、「次世代を担う若年層や子育て世代が、仕事と家庭生活を両立し働きやすい職場にしたい」という思いから。女性の産休・育休の取得は100%。そのうえ「NO!残業デー」により帰りやすい雰囲気づくりと、終業時間を伝えることによりサービス残業という古くからの慣習をなくすことで、男性も女性も家庭で過ごす時間を大事にできるようになったのです。
「毎年行なっているストレスチェックでも、職員が感じているストレスは年々、減少傾向にあります」と伊藤さん。自身も職員の給与振込など、多忙な業務を終えた後に休暇を取っているそうです。「ゆとりのある時間を過ごせる休暇の制度は、本当にありがたい」とお話しくださいました。
正職員の健やかな心身は、地域の元気にもつながります。「地元あっての私たちですから」と、昨年の4月と5月に5,000円ずつ「テイクアウト手当」を職員全員(役員をのぞく)に支給。コロナ禍の飲食店経営に少しでも寄与できるよう支給したのだそう。
金融業では、個人情報を取り扱っていることもあり在宅ワークなどは困難です。それでもコロナ禍で融資にまつわる業務は忙しく、ウイルスになど負けてはいられない仕事環境にあります。リフレッシュの機会を増やし、ストレスを軽減する。それにより、働く一人ひとりの意識的なワーク・ライフ・バランスもおのずと整うことでしょう。
「家庭を大切にする(子育てに理解がある)」「おたがいさま」そんな仕事場の空気を感じさせる2名の職員の仕事ぶりについても、お聞きしました。
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本多愛美さん(大山支店)
本多さんは体育大学を卒業し、鶴岡信用金庫に入庫して15年です。その間に、結婚、2度の出産で3人の子どもを授かり、産休と育休を取得しています。現在は小学生の双子と保育園に3才の娘を預け子育てしながら、正職員(役席者)として大山支店に勤務しています。
窓口対応の後方で、主に検証業務を行うのが本多さんの仕事です。諸届、相続や預かり資産、投資信託など窓口対応のフォローをはじめ、融資渉外担当と同行訪問も積極的に。一方、信金バスケットボールクラブチームの元キャプテンでもある本多さんは、気さくなアスリート。自分が忙しく大変な場合は上司や同僚に相談しています。
双子のママとなると、子どもに2倍、手も時間もかかります。いっぱいいっぱいになりイライラしてしまうことも。そんな時は、夫や同居している両親に甘え、協力しあう。そして、感謝の気持ちをきちんと伝えることを大事にしているそうです。子ども一人ひとり個性があり性格も違います。特に小学生になった娘たちにどう接したらいいのか、日々、悩みながら子育てに励んでいるといいます。最近では、暮らしをルーティン化し、スマートフォンのアラームや通知機能を活用してスケジュール管理を行っているそう。日常のことも段取りを決めて取り組むことで、子どもと過ごす時間を増やし、仕事上の資格試験勉強時間も確保。そのうえ自分の時間も大切にでき、自身の性格に合っているそうです。
<10年後の私は>
「両親が元気でいるうちは、仕事と育児の両立を頑張り、バリバリ仕事に励み、後輩からも慕われるようになりたいですね。母親としても、もっとゆとりをもって育児に取り組めたら、と思っています」。
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井上智音さん(文園支店)
井上さんは鶴岡信用金庫へ7年前に入庫。その間に結婚し、2人の子どもを授かり、産休と育休を取得して仕事に復帰しました。現在は正職員として、保育園に子どもを預けながら文園支店に勤務しています。
時短勤務やパートという働き方もできましたが、井上さんは正職員で働き続ける選択をしました。ただ、子どもが突然発熱したり胃腸炎になることもあり、保育園から電話があるとお迎えに行かざるをえません。そういうとき、事情を伝えれば上司は嫌な顔せず早退(時間給)や休みを承諾してくれるのだそう。「職場の先輩や同僚に申し訳ない気持ちになりますが、上司である支店長も同じ子育て中なので、大変さを理解し、お互い支え合う環境です。それがとてもありがたく感じ、しっかり仕事をしようと思うんです」。子どものことだけでなく自分自身のことも話しやすくて、働きやすい職場だと井上さんは言います。
子育てでは、家事も育児も自分がやるのが当たり前、と必死に頑張っていました。ところがある時、おままごとをする娘さんの様子にハッとしたそう。怒る口ぶりも表情までも、自分にそっくり。母として意地を張って頑張っていた時なのでショックでした。そんな時、夫から「できる人ができる時にやればいいよ」と言われ、ふっと気持ちが軽くなり救われたそうです。それからは夫や家族と協力しながら、今の生活リズムに。「疲れたときは一緒に寝ちゃえばいいと思ったら、気持ちが楽になりました」。
<10年後の私は>
「働き続け役職にもつき、部下を持つようになった時、自分のことを思い出して理解してあげたいですね。目標にしている先輩がいるのですが、お客様に好かれ、支店内をとてもいい雰囲気にします。そんな先輩の仲間入りをしたいと思っています」。
鶴岡信用金庫
所在地:〒997-0035 山形県鶴岡市馬場町1-14 本店・本部
創立年月:大正15年11月11日
職員数:193名(男性119名、女性74名)
事業内容:会員組織制の地域中小企業及び個人専門金融業務
〈令和2年度山形県多様な働き方情報発信事業〉